※この記事には作品内容に触れる部分があります
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話題になっているのは知っていたけれど、なかなか読むタイミングがなくて、
ずっと気になっていた一冊。
それが『成瀬は天下をとりにいく』でした。
本屋さんに行くたび、いつも目に入る場所に並んでいて、
今思うと、タイトルの強さと表紙のイラストで、
すでに掴まれていたんだと思います。
読む前は、正直なところ前情報はほとんどありませんでした。
立ち読みでちらっと目に入った
「西武に捧げようと思う」
という一文も、意味はよく分からないけれど、不思議と印象に残っていて、
「どんな話なんだろう?」という期待感だけはありました。
さらにこの作品は、2024年の本屋大賞受賞作。
同じタイミングで買った
『方舟』『生殖』『夢をかなえるゾウ0』の中でも、
一番ページ数が少なく、「これならすぐ読めそうだな」と思い、
最初に手に取ったのがこの本でした。
期待値は、正直かなり高め。
そんな状態で読み始めた一冊です。
主人公・成瀬あかりという人物の第一印象
物語の冒頭で成瀬あかりが登場したとき、
最初に感じたのは「なかなかマイペースな子だな」という印象でした。
自分の考えをはっきり持っていて、周りに合わせようとしない。
話し方もいわゆる“女の子らしさ”とは少し違っていて、
正直、学校生活の中では浮いてしまって大変そうだな、とも思いました。
ただ、島崎との関係性を見ていると、
決して嫌な子ではない。
むしろ、人とのつながりをちゃんと大切にしている一面もあって、
第一印象ほど突き放した存在ではないことが伝わってきます。
読んでいてふと思い出したのが、漫画『響』の主人公。
あそこまでの暴れん坊ではないものの、
成瀬にも「周りからどう思われようと関係ない」「やりたいことをやる」という
強い意思を感じました。
実は多くの人が、
心のどこかでそんな生き方に憧れているんじゃないでしょうか。
現実ではなかなかできないけれど、
「こういうふうに生きられたらいいな」という思いが、
成瀬には詰まっている気がします。
読み進めていくと、
成瀬は意外と人間味があって、
何も考えていないようで、実はちゃんと感じているものがあり、
それをうまく表現できない不器用な子だと感じる場面も出てきました。
だからこそ、数は少なくても彼女を理解してくれる友人・島崎の存在に、
読んでいるこちらまで、なぜかホッとさせられます。
物語の雰囲気と読みやすさ
全体の雰囲気は、しんみりするというよりも前向き。
それはやっぱり、成瀬あかりの性格や言動が大きいと感じました。
物語は、成瀬の「これをやりたい」という思いを起点に進んでいきます。
大きな事件が起きたり、
トラブルに巻き込まれたりする展開は多くありません
(島崎はかなり振り回されているようにも見えますが)。
それでも読んでいると、
「やりたいことをやってるなあ」
「自由でいいなあ」
と、自然と前向きな気持ちになります。
読みやすさも、かなり読みやすい一冊です。
一話ごとに区切りがあり、
短編集のような感覚で読めますが、
それぞれの話はゆるやかにつながっていて、
ただのバラバラなエピソードにはなっていません。
全体の空気感は淡々としているのに、退屈さは感じません。
むしろ読み進めるうちに、
「後悔しないように生きたいな」
「普段は怖くてできないこと、明日はやってみようかな」
そんな気持ちが、少しずつ湧いてきました。
印象に残ったエピソード
特に印象に残っているのは、
「ありがとう西武大津店」と「膳所から来ました」のエピソードです。
この場面は、成瀬あかりという人物が、
どんな子なのかを一気に分からせてくれます。
毎日テレビに映ることや、M-1に出ること。
考えてみれば、やろうと思えば“できなくもない”ことなのに、
実際に行動に移す人はほとんどいません。
それを、成瀬はやってしまう。
その行動力に、すごさと同時に
「自由だなあ」という羨ましさを感じました。
また、このエピソードでは島崎との関係性も印象的です。
成瀬の行動を見て「ちょっとおかしいな」と感じつつも、
気づけば巻き込まれていく島崎。
世間から見れば、
「一緒にいる=同じ考えの子」
と見られてしまうかもしれないのに、
それでも離れず、結果的にはどこか楽しそうに一緒にやっている。
読んでいて、
「もし自分に成瀬みたいな友達がいたら、
ここまで付き合ってあげられるかな?」
と、ふと考えてしまいました。
このエピソードから感じたこと
このエピソードに限らず、
物語全体を通して感じたのは、
成瀬は何事にも一生懸命だけれど、とても不器用な人だということです。
周りからどう見られるかよりも、
「今、自分がやりたいこと」を大切にしている。
先のことを考えていないように見えて、
その瞬間を全力で生きている感じがしました。
計算して動くタイプではないし、
要領がいいわけでもない。
それでも迷いながら、考えながら、
とにかく「今」を生きている。
だからこそ、成瀬の行動はときどき理解しづらくて、
でも、なぜか目が離せなくなるのかもしれません。
こんな人におすすめ
この本は、正直に言うと、万人向けではないと思います。
だからこそ、「今の自分」に合う人には、しっかり刺さる一冊です。
おすすめしたいのは、
仕事や生活に少し疲れていて、
なんとなく元気が出ない人。
青春に触れたい気持ちはあるけれど、
恋愛ものやキラキラした話はちょっと違う。
そう感じている人には、かなり合うと思います。
また、
「このままでいいのかな」
「本当はやってみたいことがあるけど…」
そんなふうに、自分の選択に迷っているときにも、
成瀬の生き方は、静かに響くはずです。
逆に、
起伏の激しいストーリーや、
ドキドキする展開を期待して読むと、
少し物足りなく感じるかもしれません。
まとめ|成瀬は天下をとりにいくを読んで思ったこと
『成瀬は天下をとりにいく』は、
大きな事件や分かりやすい感動を押しつけてくる物語ではありません。
それでも読み終えたあと、
不思議と気持ちが少し前を向いていることに気づきました。
成瀬あかりは、
誰にでも好かれるタイプでも、
要領のいい人でもありません。
それでも、自分の「やりたい」を大切にして、
不器用なりに今を生きています。
現実的に真似できるかと言われれば難しい。
それでも、
「周りの目を気にしすぎなくてもいいのかもしれない」
そんな気持ちを、そっと思い出させてくれました。
派手さはないけれど、
読み終えたあとに、少しだけ視界が広がる。
この本は、そんな読後感の残る一冊です。


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